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今だから分かる,氷室 冴子『海がきこえる』の彼女たちの哀しさ [おすすめ本]

僕が好きなひとへ―海がきこえるより

僕が好きなひとへ―海がきこえるより

  • 作者: 氷室 冴子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1993/05
  • メディア: 単行本
海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

  • 作者: 氷室 冴子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1999/06
  • メディア: 文庫
氷室 冴子さんの作品は大好きなのですが,この作品は昔読んだはずなのに,ほとんど印象に残っていませんでした.「えーと….確か,都会育ちでワガママな女の子が,地方に来て仲間はずれにされる話でしょ?」って(笑).
たぶん,最初に読んだのは高校生のころなので,それから約15年を経た今,読んだ感想はぜんぜん違いました.
・この物語の主人公は,「杜崎くん(男の子)」なんだ!
ということに初めて気付きましたし,
・ワガママな里伽子(りかこ)は,親が離婚して傷ついていたんだ
ということにも,これまた初めて気付きました.15年前の私はいったい何を読んでいたんだ?(笑) という感じですね.
たぶん,最初に読んだときは,「なんでこんなワガママ放題の子に同情してあげなきゃいけないんだろう(美人だからってハナにかけて!)」みたいな感想,まあ,どちらかというと里伽子のクラスメートの女子に近い感想を持ったのだと思います.今読んでも,「ちょっと周囲を利用しすぎじゃない?」という気はやっぱりしますし(笑).
でも,この作品で語りたいのは,里伽子の哀しさではなく,杜崎くんの優しさなんだと思います.フツーの高校生ながら,どこか筋の通った,すてきな杜崎くん.こういう人って好きだなぁ,という….いわば,『なぎさボーイ』の高校版,とでもいうか.
今読むと,自分の気持ちを杜崎くんの気持ちに重ねて読めるので,わりと違和感なく「とある高校生の心象風景と成長物語」というように楽しんで読めます.そして,杜崎くんを通して,里伽子の哀しさや知沙さんの哀しさに,素直にうなずけます.
あと,この作品を読みながら,ずっと柴門ふみの『同級生』や『東京ラブストーリー』を思い出していました.なんだか似てません? リカと里伽子.出身地が地方(四国)ってところも同じ気がします.どちらかがどちらかに感化されているのでは? と思うのは,私だけでしょうか.
今回は,『海がきこえる』を単行本版で,『海がきこえる II』を文庫版で読みました.単行本のイラスト(画:近藤 勝也氏)はすごくすてきでしたが,文庫版のアニメ・イラストはいまいち….単行本の絵コンテのような雰囲気のほうがずっとずっと合っていると思います.
この作品,スタジオジブリでアニメ化されている,と聞きましたが,文庫版のアニメみたいな絵柄になっているなら,なんか観たくないなぁ….

タグ:氷室 冴子
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