『海がきこえる』みんなの感想を読んでみた [おすすめ本]
前回,『海がきこえる』の感想を書いてから,うーん自分の書きたいことってこんなんだっけ….とうじうじ思いました.
この本,すてきなんです.でも,それを伝えられてない.…
で,みんなはどう思っているんだろう? と気になって,検索してみました.参考になったのはAmazon.co.jpの中にあったカスタマー・レビューですね.
# みんな,なぜか,私の好きなイラスト表紙の単行本ではなく,文庫のほうにレビューを書いているんですね….
淡々と進む物語なのに,飽きない,なつかしい,自分の高校時代の葛藤やなんかを思い出す.そんな感想が多かったですね.確かに,確かに.
氷室冴子さんのストーリー・テリングのすばらしさに言及している人も多かったです.そうでしょ,そうでしょ.
理伽子に共感している人はあまりいなかったですね.やっぱりそうかぁ.…
なんていうか,昔の不器用だった自分を振り返って「あのころはあぁだったよなぁ」,と赤面と懐かしさとが入り交じって戻ってくるというか,そういう小説なんだと思います.
そう思うと,理伽子がいかにも「理想のガール・フレンド」っぽいところも許せちゃうし.「つまり,この作品は,あくまでも杜崎 拓フィルタを通した過去への追想なわけね」,って.
ちょっと,松任谷由実の「自分フィルタ」に近いものを感じます.彼女も名曲『卒業写真』で,
「人混みに流されて変わっていく私を あなたはときどき遠くで叱って」
と歌っています.これは,”あなた”は変わらない,という(自分勝手な)思い込みに基づいたメッセージであり,この”あなた”は,卒業アルバムの中の(いわば,過去そのままで固定した)”あなた”なわけです.
実際には,”あなた”もまた人混みに流され(あるいは成長して),変わっていくわけで….不器用な,でもまっすぐな,かつてのあなたではないわけで.でも,”私”にとっては,実際の”あなた”のありようが問題なのではなく,過去そのままで固定したあなたさえそこにいてくれれば,それでいい.…そんなことを感じます.
それから,WikiPediaなんかで「アニメージュ連載から単行本化されたときに,大きく変更された部分がある」と書いてあったのが気になっていましたが,それについても,南洋駄菓子本舗さんの「海がきこえる~幻の四万十編を追う③」を読んで,謎が解けました.
なるほど~.そうだったんですね.
でも,単行本は単行本で,とても素敵な読後感だと思いました.
うーん....アニメより小説のほうが好き,という人が多くカスタマー・レビューを書いていたので,もうアニメは見なくてもいいかな,という気分になってきました(笑).
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