ル・グィンの短編「相対性」,「オメラスから歩み去る人々」 [おすすめ本]
アーシュラ・K・ル・グィンは,かの有名な『ゲド戦記』シリーズの作者です.私はゲド戦記の1巻目(『影との戦い』)は,結末のつけかたに納得がゆかなかったのですが,2巻目『こわれた腕環』と4巻目『帰還 -ゲド戦記最後の書-』は高く評価しています.
そんなわけで,まぁいちおう読んでおくか…と手に取った短篇集『風の十二方位』でした.
私はあまりSFを読んだことがないもので,また,彼女の講演集のようなものはあまりおもしろく読めなかったので,多少の不安を抱えながらこの本を読んだのですが,いくつかとてもおもしろいものがありました.
ゲド戦記の世界観で書かれた短編「解放の呪文」,「名前の掟」がおもしろいのはもちろんとして,ガーンと頭を殴られたようなショックを受けたのが「オメラスから歩み去る人々」です.これは名作です.読まなければよかった,と思うほどショックを受け,また考え込んでしまいます.
最初はとっつきにくかったけれど,よく読むととてもおもしろいのが「相対性」です.理屈くさいといえばそうなのかもしれませんが,情景をアニメーションのように想像しながら読むと,本当におもしろいです.
「革命前夜」も強く印象に残りました.主人公は老女なのですが,いったい何歳のときに彼女はこれを書いたのでしょう.まるで,自身が72年の人生を経てきたような書きっぷりです.
2006-08-26 20:50
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