大人の女性にお勧めします [おすすめ本]
この本,ほとんど官能小説だと思うのですが,官能小説とは明らかに違う点があります.それは,20歳の娼夫である主人公が,女性の身体ではなく心に着目し,深く関心を持っているからです.
それと,官能小説に出てくる女性は,たいがい,ワン・パターンの反応を示しています.それはおそらく,男性を興奮させ,喜ばせるような反応の仕方なのだと思います(それが身体を売る女性ではなく,ごく普通の登場人物である場合も同様).でも,女性である私から見ると,とにかく男性のために,媚を売っている小説に見えるのです.その小説は,文学作品というよりは,男性のための道具のように見えます.
この作品では,女性が実に自然に,生き生きと描かれています.本当に,そのあたりにいそうな,生身の人間として理解したり共感したりできます.それはきっと,作者である石田 衣良さん(男性)が,細やかで優しい神経を持っているからなのだと思います.
大人の女性に,ぜひお勧めしたい一冊です.
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