食うものの論理,食われるものの論理 ――『銀のほのおの国』 [おすすめ本]
小学6年生のおにいちゃんと3年生のいもうとが,ふとしたことから,トナカイと青イヌ(オオカミ)が対立する世界に引きずり込まれます.2人は,元の世界へ帰るため,しぶしぶ冒険を始めるのですが...
いかにも児童文学っぽい始まりではありますが,つい,この世界に引きずり込まれてしまいます.青イヌはウサギやムジナたちから恐れられていますが,それは,この物語世界の設定によると,青イヌが空腹を満たすためだけでなく,楽しみのためにもほかの動物を襲い,殺すからです.
人間だって生き物を殺して食っている.なのに,青イヌだけを残虐な存在として語るのはどうなの? と思いながら読んでいたのですが,この物語世界では,上記のような前提があるそうです.なるほど.
青イヌたちを見ていると,まるで戦国時代の武将や軍隊のようだ...と思いました.そう,まさに彼らは,人間の「狩猟民族」のようなのです.それも,アイヌのような,「熊を神として崇めながら肉をいただく」という狩りではなく,征服するための狩りをする人間です.
物語のストーリもそれなりにおもしろかったのですが,長耳(ウサギ)がとても魅力的でした.茶をふるまう茶袋,吟遊詩人,そして薬を探しあてる名人の人参掘り.力のない者にはないなりの戦い方がある…(私も見習いたいものだ).
児童書コナーは私の憩いの場です
難しい本が理解できない時、逃げ込みます
なんだか、青犬が人間に思えてドキリとしました
by (2007-02-22 19:27)
のんべいキャサリンさん:
コメントありがとうございます.
私も児童書が大好きです.というか,「こども向け」とあなどれない児童書がけっこうあるのだな,ということを最近感じています.
そうなんですよね.食物連鎖の頂点に立ち,我らこそ,この世界の支配者だ,と思っているのは,人間そのものの姿だ,と思いました.
作者がこの作品に何を託そうとしたのか,ふと考えてしまいます...
by Rei (2007-02-26 15:45)