絶妙な伏線と展開に「やられた!」と納得『ガラスの麒麟』 [おすすめ本]
加納朋子さんの作品は,友人に勧められて『いちばん初めにあった海』を読みました.感想は,「ミステリーとしてはすばらしい! でも心情描写はちょっと非現実的じゃないかなぁ…」というものでした.
だから,彼女のミステリー(謎解き)ものを読んでみたくて,行き当たりばったりに手にとったのが本書です.
これが,めちゃめちゃ面白かったです.
特に第1作目.引き込まれる設定と展開,あれ? と微妙にひっかかる違和感がそのまま伏線,種明かしにつながっていって,満足感の高い作品です.それに,特に1話目は良かったです.
本書に収録されている短編は連作になっているのですが,…いちばん終わりはやっぱりイマイチでした.というのも,やっぱり心情描写で納得いかないところが出てくるんです.
きっと,作者は,心の悩みや迷いについては理解しているんだろうけれど,彼女にとって「死」というテーマはまだそれほど身近なものではない(少なくとも執筆時は,という意味では「なかった」と言うべきか)んだと思います.そこを,想像だけで補って悲しい話に仕立て上げようとするから,なんだかとってつけたような,少女の妄想のような小説に見えてしまうのだと思います.
そんな偉そうなことをいうおまえは何を知っているのか?! と言われそうですが,
まあ,彼女が描く登場人物の女性が,たいてい美しいかかっこいいかだ,というのも,私が若干の反発を抱いてしまう理由かもしれません.
謎解きとしては,文句なくおもしろいです.
ぜひ皆さんも,ご一読くださいませ.
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