聖人君子かと思いきや,意外と親しみやすい山本周五郎『人情裏長屋』 [おすすめ本]
山本周五郎と言えば『日本婦道記』くらいしか読んだことがなかったので(しかも中高生のころ),女性は3歩後ろを歩いてくるがよい,というような価値観の人なのかな… などと勝手に思っていました.たまたま手にとった短編集が思いの外面白かったので,これも手に取ってみた,というわけです.
なにが良いって,このタイトルならハッピーエンドに決まっている,と思って安心して読めるところです.不遇な人がいて,チャンスがめぐってきて,…でも逃すか逃さないかは作品によって異なる.でも,この短編集は,どれもそれなりにハッピーエンドで終わってくれるので,とても読後感が良いです.
あとは,色恋沙汰が実に自然に織り込まれているのが好印象でした.山本周五郎,堅い人かと思っていましたが,なかなかどうして.講談のように笑いあり涙あり,楽しめる作品がいっぱいです.
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