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芸術とは,戦争とは,自分のホンネを聞いてみたいときにお勧め『堕落論』 [おすすめ本]

堕落論 (新潮文庫)

堕落論 (新潮文庫)

  • 作者: 坂口 安吾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/06
  • メディア: 文庫

タイトルからして,なんだか非倫理的な内容の小説なのかと思っていたら,とんでもありませんでした.自分の身の回りにあるもの,起こること,それらを真摯なまなざしで見つめた結果,出てきた真実の言葉が集められているのだな,と思いました.

悟りきったような小林秀雄を「教祖の文学」と切り捨てたり,防空壕の中でワクワクした体験を語るかと思えば,原子爆弾による戦争は「効能を被害が上回る」から「もはや,戦争はやるべきではない」と断言したりと,彼の言論は自由自在に広がります.モラルのないことこそがモラルである,「堕ちる道を堕ちきることによって,自分自身を発見し,救わなければならない」等々,文面だけを見ていると,なんだか騙されているような納得のいくようないかないような微妙な感じもあるのですが,かりに主張が矛盾しているとしても,それはどれも彼の腹の底から出ている言葉だと思えます(とやかく反論すると,「人間だから,いつでもどこでも主張が首尾一貫しているわけはない.あたりまえじゃあないか」と喝破されそうです.そういう,底の据わった感じを受けます).

彼に共感したのは,「家に帰ると(だれも怒る人がいなくても)つい反省してしまう」というエピソードがあったあたりからです.なんだかよく分かるなあ,と思うのは,私が日本人だからなのでしょうか.それとも,人類全般にそういう心情があるのでしょうか.

あと,彼の文章は,読みにくいものと読みやすいものがあります(この本で言うと,冒頭の「FARCEに就て」が読みにくかったです).途中でザセツしそうになった方は,読みやすいところから読んでみることをお勧めします.


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