SSブログ

キレたい人におすすめ,山本周五郎『さぶ』 [おすすめ本]

さぶ (新潮文庫)

さぶ (新潮文庫)

  • 作者: 山本 周五郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1965/12
  • メディア: 文庫
最近やたらと山本周五郎にはまっている私ですが,『さぶ』ってそう言えば有名な作品だったはず….読んでみよう! ってなわけで,手にとってみました.
前にも言ったかもしれませんが,山本周五郎=やたらと教訓的な「いい話」を書く人,というイメージがあったので,この作品もどんなんかなぁ… と期待と不安半々で読んだのですが,いやあ,おもしろかったです.
主人公は「さぶ」,かと思いきや,基本的にはその友人の「栄二」なんですね.この人が,かっこいいわケンカは強いわ仕事はできるわ,というなかなか危なっかしげな活躍を見せるのが冒頭のところ.でも,ケンカ慣れしているわりには職人として地道に腕を磨き,いよいよこれからが人生の華… というところで,ぬれぎぬ? トラブル? に巻き込まれ,そこからどんどん悪くなって… という展開です.
「なにも,そこまで堕ちなくってもよさそうなもんじゃない」などと凡人の私なぞは思うわけですが,栄二は,良くも悪くもまっすぐですね.だめとなればとことん堕落していってしまうような,そんな人で.
そんな彼を周囲ではらはらしながら支えている人たちがいて.
自分だけが不幸になった気分でイラつく,すべての人に,この本をお薦めしたいです.
また,長編なのに,終わり際がとてもいいんですよ.ぜひ読んでみてください.

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

聖人君子かと思いきや,意外と親しみやすい山本周五郎『人情裏長屋』 [おすすめ本]

人情裏長屋 (新潮文庫)

人情裏長屋 (新潮文庫)

  • 作者: 山本 周五郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1980/09
  • メディア: 文庫
山本周五郎と言えば『日本婦道記』くらいしか読んだことがなかったので(しかも中高生のころ),女性は3歩後ろを歩いてくるがよい,というような価値観の人なのかな… などと勝手に思っていました.たまたま手にとった短編集が思いの外面白かったので,これも手に取ってみた,というわけです.
なにが良いって,このタイトルならハッピーエンドに決まっている,と思って安心して読めるところです.不遇な人がいて,チャンスがめぐってきて,…でも逃すか逃さないかは作品によって異なる.でも,この短編集は,どれもそれなりにハッピーエンドで終わってくれるので,とても読後感が良いです.
あとは,色恋沙汰が実に自然に織り込まれているのが好印象でした.山本周五郎,堅い人かと思っていましたが,なかなかどうして.講談のように笑いあり涙あり,楽しめる作品がいっぱいです.

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ぎりぎりのところで勝負する人間たち,つかこうへい『幕末純情伝』 [おすすめ本]

幕末純情伝―龍馬を斬った女 (角川文庫)

幕末純情伝―龍馬を斬った女 (角川文庫)

  • 作者: つか こうへい
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1990/12
  • メディア: 文庫

 

つかこうへい氏の作品と言えば,『蒲田行進曲』や『飛龍伝』などを読んでいましたが,描いているのはいつも,崖っぷちのようなぎりぎりのところに立って,醜さと美しさを発揮している「人間」なんですね.だいたい女性は開き直る.でもすごく一途.だいたい男性はへなへなしている.でもいざというと,体を張って勝負する.だらしなさとかっこよさを飾らずに表現していると思います.
それにすごく演劇的.小説として読んでいても,舞台上の雰囲気がぐんぐん想像されます.

この作品も,お琴や土方,山崎,服部半蔵など,みんないい味を出しています.いちばん良いのは,菊一文字を手にしたお琴.土方をぐいぐい攻めていく様子に鳥肌が立ちました.


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

なんかハマりだした『電脳コイル』 [おすすめ本]

電脳コイル 1 (1) (TOKUMA NOVELS Edge)

電脳コイル 1 (1) (TOKUMA NOVELS Edge)

  • 作者: 宮村 優子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 新書

 

昨年だったか,20代の後輩から「電脳コイル,ってアニメ,おもしろいですよ~」と薦められました.土曜夕方にNHKで放映していたので,たまたま夕方に自宅にいた日に,ちょっとテレビを点けてみました.でも,なんだか薄暗~い雰囲気で,あんまり保育園児に見せたい雰囲気でもなくて,消してしまいました.

でも,ちょっぴり「今の人の感覚についていけない私」に負い目を感じていました.

そして先日.行きつけの図書館の新刊コーナで,小説『電脳コイル 4』,『電脳コイル 5』が並んでいました.お,これは良い機会かも….とりあえず4をget.
読みながら,デンスケってこれかあ,とか,カンナさんってこうなのね,と疑問を解消しながら読んでいました.

宮部みゆきや東野圭吾とは比べ物にならない文章力…だとは思うけれど,ついつい続きが気になって,ついに第1巻から読み始めました.ヤサコとイサコ,私はイサコのほうが好きだけれど(ヤサコは一人称語りが多い分,いやなところがたくさん見えます),まあそういうふうに作っているんでしょうね.あ,いちばん好きなのはタマコさんかも(大人だから? かっこいいから?).

それにしても,マリリンマリーンとは何者なのか.それが一番の謎であり,物語を読む楽しみかもしれません.


タグ:電脳コイル
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

タイトルに偽りあり? それともまんま? ともあれおすすめ『絵画で読む聖書』 [おすすめ本]

絵画で読む聖書 (新潮文庫)

絵画で読む聖書 (新潮文庫)

  • 作者: 中丸 明
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 文庫
表紙の上品な雰囲気とはぜーんぜん違う内容にちょっと度肝を抜かれます.でも,よくよく読めば,これは聖書に基づいて描かれた西洋の絵画のタイトルを見て「ん… ヴェロニカって誰?」などと思っている人にぴったりの本だと思います.
私も,音楽や絵画などの芸術作品を通じて,聖書を読んでみたい,と思ったことは何度かありました(例えば,リヴァイヤサン,とは旧約聖書に出てくる怪物の名前だ,と聞いて一生懸命探したり….今みたいにインターネットの発達していない時代の話であります).でも,旧約は「光あれ」のあたりはまだいいのですが,イサクだのヤコブだのソロモンだのネプカドネザルだのとたどってくると,いったいいつがいつやら,何がどうなったやらさっぱり不明,しかも神もそのときによって怒ったり怒らなかったり,いったい何が基準なのか分からなくなります.新約は家系図を延々を述べられても… と途方に暮れてしまいます.
そんな「にわか聖書読み」のために書かれたのが,本書です.実に分かりやすく下世話に表現してくれていて,その中で雑学も披露されています.どこまでが真実なのかはどうでもいいとして,なるほど,だいたいこんな感じなのね~ と理解するにはちょうどいい.そんない~い加減な人に(私もね),この本をお薦めします.

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

世界史をやり直したい人におすすめ『ハプスブルク一千年』 [おすすめ本]

ハプスブルク一千年 (新潮文庫)

ハプスブルク一千年 (新潮文庫)

  • 作者: 中丸 明
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/06
  • メディア: 文庫

ハプスブルク家の起こりから終焉までを,世界史のあれこれの事件と結びつけながら紹介するお気楽な読み物です.その土地土地の方言を名古屋弁でしゃべらせてみたり,下世話に表現してみたりと,最初は拒否反応が出そうだったのですが,その根底に,「こうでもしないと他国の歴史なんて読んでられないでしょう」というサービス精神があることに気付くと,とたんに気が軽くなってスイスイと読めるようになりました.

そう言えば私の高校の世界史の先生も,歴史を講談調に語ってくれる人でした….映画が大好きな先生で,歴史の話をしているかと思えば,その歴史に関連した映画のオススメ評論にいつのまにか話がずれていったりして,とにかく「この先生はこの世界が好きなんだなあ」とことあるごとに感じていました.そういう情熱って,きっと伝わるものなんですねぇ.

中丸さんって,きっと,気遣いのできるサービス精神にあふれた人なんですね.かなり軟派っぽく表現しているけれど,実際はまじめな人だったりして….

なんて思いながら読み終わりました.
ふつうの歴史書ではザセツしてしまう人に,おすすめです.


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

“うつ”ってどんな病気なのかを知るのに適当『うつから帰って参りました。』 [おすすめ本]

うつから帰って参りました。

うつから帰って参りました。

  • 作者: 一色 伸幸
  • 出版社/メーカー: アスコム
  • 発売日: 2007/09/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
帯には「爆笑と感涙」とあるけれど,ぜんぜん笑えない,シリアスな話だと思いました.
私は残念ながら一色さんの脚本による映画やドラマをほとんど見ていないので,せっかくの裏話的な内容も「ふーん… あの作品(名前だけは知っているものも,知らないものも)は,こんな背景から生まれてきたのね…」ということくらいしか分かりませんでした.
それでも,作品というものが,さまざまな葛藤や思索から生まれてくることはよく分かった気がしました.
うつ病,と診断された人は,身近に意外とたくさんいます.それから最近の人身事故の多さから考えても,世の中にもたくさんいるんだろうな,と思います.彼らを励ましちゃいけない,というのはよく聞くのですが,ではいったいどう接したらよいのか? そもそも何を悩んで彼らはそうなってしまうのか? 等,直接本人には聞きにくいけれど知っておきたいことがありました.それで,この本を読んでみたいと思ったのです.
読んで思ったのは,本人にとって深刻な問題にぶつかり,逃げられないと感じてしまっているのだな,ということです.“本人にとって”というのが性質が悪くって,周りから見れば「え? いつか来る死が怖い? 人間なんていつかはみんな死ぬんだから,そんなこと悩んだってしょうがないよ」などと笑い飛ばしてしまえるようなところで,つまずいてしまう.でも,考えの違う人をむりやりその考えから引きずり出すことはたぶん不可能で,そうしようとすればするほど,その人は,自分が理解してもらえないことでさらに落ち込んでいくのでしょうね….
逃げたければ逃げればいい.現実逃避大歓迎.本人の意見をそのまま受け入れてやる.…そういうことを時間をかけて行っていくことで,少しずつ,病気が去っていく,んだろうなあ… と思いながらも,受け止める側は器が大きくないと務まらないなぁ,とも思います.
ただ,本を読んで分かったつもりでいても,現実の生身の病気の人間と相対したとき,適切な対応を自分がとれるかというと….逃げ出したくなったり,ほかの人に任せたくなることも容易に想像できます.結局は,「この人を救えるのは自分しかいない」と思い込めるほどの近しい関係がないと,全力でサポートすることは難しいようにも思います.
ただ,全力でサポート,まではできなくても,少なくとも悪い方にとらないくらいの努力はできるかも,しれません….

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

芸術とは,戦争とは,自分のホンネを聞いてみたいときにお勧め『堕落論』 [おすすめ本]

堕落論 (新潮文庫)

堕落論 (新潮文庫)

  • 作者: 坂口 安吾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/06
  • メディア: 文庫

タイトルからして,なんだか非倫理的な内容の小説なのかと思っていたら,とんでもありませんでした.自分の身の回りにあるもの,起こること,それらを真摯なまなざしで見つめた結果,出てきた真実の言葉が集められているのだな,と思いました.

悟りきったような小林秀雄を「教祖の文学」と切り捨てたり,防空壕の中でワクワクした体験を語るかと思えば,原子爆弾による戦争は「効能を被害が上回る」から「もはや,戦争はやるべきではない」と断言したりと,彼の言論は自由自在に広がります.モラルのないことこそがモラルである,「堕ちる道を堕ちきることによって,自分自身を発見し,救わなければならない」等々,文面だけを見ていると,なんだか騙されているような納得のいくようないかないような微妙な感じもあるのですが,かりに主張が矛盾しているとしても,それはどれも彼の腹の底から出ている言葉だと思えます(とやかく反論すると,「人間だから,いつでもどこでも主張が首尾一貫しているわけはない.あたりまえじゃあないか」と喝破されそうです.そういう,底の据わった感じを受けます).

彼に共感したのは,「家に帰ると(だれも怒る人がいなくても)つい反省してしまう」というエピソードがあったあたりからです.なんだかよく分かるなあ,と思うのは,私が日本人だからなのでしょうか.それとも,人類全般にそういう心情があるのでしょうか.

あと,彼の文章は,読みにくいものと読みやすいものがあります(この本で言うと,冒頭の「FARCEに就て」が読みにくかったです).途中でザセツしそうになった方は,読みやすいところから読んでみることをお勧めします.


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

あっと驚く展開『容疑者Xの献身』 [おすすめ本]

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/08/25
  • メディア: 単行本
直木賞受賞作として話題になったこの作品,前から気になってはいたのですが,ついに読んでみました.
東野さんの作品は,もう“心地良く騙される”気持ち満々で読み始めるようなところがあるのですが,この作品の展開には,心からあっと驚きました.ま,まさか,それが真実だったとは….
(まあ,フィクションだと思うから信じられる,というようなところもありますけどね.これがノンフィクションだったら,本当にそら恐ろしい話です)
読み終えたとたんにまた最初から読み始めたくなる,秀作です.
“ガリレオ先生”と聞いて「あれ?」とちょっとひっかかっていたのですが,これはフジテレビで福山雅治が演じた『ガリレオ』シリーズとつながっているのですね.
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2008/08-056.html
ん? でも,福山さんが湯山助教授?ってことは,この作品に出てくる石神氏と同い年なの?! なんかギャップがあるんですが….
でもこの作品を読んで,ほかの湯山(ガリレオ)シリーズも読んでみたくなりました.イメージは福山さんとは違うけれど,偏屈で活動的な湯山助教授は,とっても魅力的な人物です.

タグ:東野圭吾
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

犯罪被害者の家族による「仇討ち」の是非を問う『さまよう刃』 [おすすめ本]

さまよう刃

さまよう刃

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2004/12
  • メディア: 単行本
まあなんというか,気持ちの重くなる本です.犯罪被害に遭う,というだけできついのに,その復讐を遂げることで被害者までが罪人になるわけで,それを周囲が安易に「気持ちは分かる」とか,「でもやっぱりいけない」とか忠告できるものではない,ということを,思い知らされます.
読むまでは,被害者の家族が復讐するかどうかで迷う話なのかと思っていました.でも,この被害者の家族には,いっさい迷いはないのですね.あれだけのことをされればそうなのかもしれない,とは思いつつ,でも自分の手で復讐できるのか? というと,私自身はよく分かりません.…まあ,それだけ「部外者」なんだ,ということですね….
「結末だけは最初から決めていた」と,作者である東野さんは言っておられました.最後まで読んで,なるほどそういう意図か,と思う反面,心情的に割り切れないものも感じます.そして,この歯がゆさこそがまさに作者の術中に陥っていることなのだな,と,あらためて東野さんの語りのうまさに感心します.

タグ:東野圭吾
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。