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疲れた気持ちをリフレッシュ! 山本 文緒『パイナップルの彼方』 [おすすめ本]

パイナップルの彼方 (角川文庫)

パイナップルの彼方 (角川文庫)

  • 作者: 山本 文緒
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1995/12
  • メディア: 文庫

 

恵まれたのんきなOL生活の中に,ちょっとした波乱が….という程度の情報で「あ,電車の中の気分転換に良いかも」と手にとりました.が,思いのほか物語に引き込まれ,夢中で読み終えました.そう言えば20代のころって,こんなこと考えてたよなぁ… と感慨にひたることしきり.30代の今読んでも青臭さを感じることなく,すごく実感のこもった物語を体験しました.

女性同士の付き合いって,気のおけない間でもちょっとしたいさかいがあったり,すれ違いがあったりしますよね.ましてや「社交辞令」的な付き合いだと,誤解がとんでもないトラブルに発展してしまったり….そんな中で主人公が感じていること,人生観,結婚観,これまでの経験など,少しずついろんなことを知りながら彼女を理解していく.共感する.そんなことが,とても楽しかったです.

解説でもべたぼめされていますが,『ブルーもしくはブルー』なんかも読んでみようかな….と思いました.彼女の作品を,もっと読みたいです.


タグ:山本 文緒

プチ・ストレス解消に良し?『実は悲惨な公務員』 [おすすめ本]

実は悲惨な公務員 (光文社新書)

実は悲惨な公務員 (光文社新書)

  • 作者: 山本 直治
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 新書

役人廃業.com」という公務員向けの転職情報サイトを運営している山本 直治さん.以前,新聞のコラムでその存在を知ってから,ちょっぴり気になっていました.で,そのサイトの中で紹介されていた本書を読んでみたところ,予想以上におもしろかったので,ここで紹介します.

「公務員」と聞くと,安定していて仕事はラク,待遇は恵まれている,というイメージがありますが,本書では,「とにかく“公務員”というくくりでひとからげにして批判したりうらやんだりするのはやめませんか?」というメッセージで埋め尽くされています.言われてみれば当たり前のこと.「サラリーマン=安月給」というステレオタイプなイメージが実状にそぐわないのと同じですよね.サラリーマンにもいろいろあれば,公務員にもいろいろあるわけで.

例えば激務の公務員もいる.例えば厳しい精神的ストレスにさらされ続ける公務員もいる.もちろん安月給の公務員もいる.また,例えば窓口のクレーム対応などで抜群の能力を見せる,などの,業績として表れにくいスキルを持った公務員もいる(給料が,その人の能力に見合っているかどうか,というのを正確に判定するのは,どの業界,どの分野でも難しいですよね…たぶん).

その一方で,ラクして9時~17時勤務,夕方以降は勤務室内で宴会,なんてことをしている公務員もあるらしいです.でも,「だから公務員は!」ではなく,もっと限定してねらい打ちで批判してくださいよ,ということです.言われてみれば,本当にそうですよねぇ.

で,なぜ本書がストレス解消になるか,と言えば,「思ったより恵まれていない公務員もいるんだ(私と同じだ!)」とか,「確かにこういう公務員は許せない,うんうん」と悦に入ったり,「うーん公務員宿舎は安いけど確かにボロだな(でも私が以前住んでいた,築30年の団地はまさにそんな感じだった…)」などと,知らなかった世界を覗けるからです.で,笑ったり憤ったりしながら,「ま,みんないろいろで大変なんだな.自分もがんばろう」と無難に思って本書を閉じられるのです.

タイトルは奇抜だけれど内容はまっとう,でも,読んだ時間が無駄とは思われない.そんな本の1冊です.ぜひみなさんも,目を通してみてください.


『海がきこえる』みんなの感想を読んでみた [おすすめ本]

前回,『海がきこえる』の感想を書いてから,うーん自分の書きたいことってこんなんだっけ….とうじうじ思いました.

この本,すてきなんです.でも,それを伝えられてない.…

で,みんなはどう思っているんだろう? と気になって,検索してみました.参考になったのはAmazon.co.jpの中にあったカスタマー・レビューですね.

海がきこえる (徳間文庫)

海がきこえる (徳間文庫)

  • 作者: 氷室 冴子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1999/06
  • メディア: 文庫

# みんな,なぜか,私の好きなイラスト表紙の単行本ではなく,文庫のほうにレビューを書いているんですね….

淡々と進む物語なのに,飽きない,なつかしい,自分の高校時代の葛藤やなんかを思い出す.そんな感想が多かったですね.確かに,確かに.

氷室冴子さんのストーリー・テリングのすばらしさに言及している人も多かったです.そうでしょ,そうでしょ.

理伽子に共感している人はあまりいなかったですね.やっぱりそうかぁ.…

なんていうか,昔の不器用だった自分を振り返って「あのころはあぁだったよなぁ」,と赤面と懐かしさとが入り交じって戻ってくるというか,そういう小説なんだと思います.
そう思うと,理伽子がいかにも「理想のガール・フレンド」っぽいところも許せちゃうし.「つまり,この作品は,あくまでも杜崎 拓フィルタを通した過去への追想なわけね」,って.

ちょっと,松任谷由実の「自分フィルタ」に近いものを感じます.彼女も名曲『卒業写真』で,

「人混みに流されて変わっていく私を あなたはときどき遠くで叱って」

と歌っています.これは,”あなた”は変わらない,という(自分勝手な)思い込みに基づいたメッセージであり,この”あなた”は,卒業アルバムの中の(いわば,過去そのままで固定した)”あなた”なわけです.
実際には,”あなた”もまた人混みに流され(あるいは成長して),変わっていくわけで….不器用な,でもまっすぐな,かつてのあなたではないわけで.でも,”私”にとっては,実際の”あなた”のありようが問題なのではなく,過去そのままで固定したあなたさえそこにいてくれれば,それでいい.…そんなことを感じます.

それから,WikiPediaなんかで「アニメージュ連載から単行本化されたときに,大きく変更された部分がある」と書いてあったのが気になっていましたが,それについても,南洋駄菓子本舗さんの「海がきこえる~幻の四万十編を追う③」を読んで,謎が解けました.

なるほど~.そうだったんですね.

でも,単行本は単行本で,とても素敵な読後感だと思いました.

うーん....アニメより小説のほうが好き,という人が多くカスタマー・レビューを書いていたので,もうアニメは見なくてもいいかな,という気分になってきました(笑).


タグ:氷室 冴子

今だから分かる,氷室 冴子『海がきこえる』の彼女たちの哀しさ [おすすめ本]

僕が好きなひとへ―海がきこえるより

僕が好きなひとへ―海がきこえるより

  • 作者: 氷室 冴子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1993/05
  • メディア: 単行本
海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

  • 作者: 氷室 冴子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1999/06
  • メディア: 文庫
氷室 冴子さんの作品は大好きなのですが,この作品は昔読んだはずなのに,ほとんど印象に残っていませんでした.「えーと….確か,都会育ちでワガママな女の子が,地方に来て仲間はずれにされる話でしょ?」って(笑).
たぶん,最初に読んだのは高校生のころなので,それから約15年を経た今,読んだ感想はぜんぜん違いました.
・この物語の主人公は,「杜崎くん(男の子)」なんだ!
ということに初めて気付きましたし,
・ワガママな里伽子(りかこ)は,親が離婚して傷ついていたんだ
ということにも,これまた初めて気付きました.15年前の私はいったい何を読んでいたんだ?(笑) という感じですね.
たぶん,最初に読んだときは,「なんでこんなワガママ放題の子に同情してあげなきゃいけないんだろう(美人だからってハナにかけて!)」みたいな感想,まあ,どちらかというと里伽子のクラスメートの女子に近い感想を持ったのだと思います.今読んでも,「ちょっと周囲を利用しすぎじゃない?」という気はやっぱりしますし(笑).
でも,この作品で語りたいのは,里伽子の哀しさではなく,杜崎くんの優しさなんだと思います.フツーの高校生ながら,どこか筋の通った,すてきな杜崎くん.こういう人って好きだなぁ,という….いわば,『なぎさボーイ』の高校版,とでもいうか.
今読むと,自分の気持ちを杜崎くんの気持ちに重ねて読めるので,わりと違和感なく「とある高校生の心象風景と成長物語」というように楽しんで読めます.そして,杜崎くんを通して,里伽子の哀しさや知沙さんの哀しさに,素直にうなずけます.
あと,この作品を読みながら,ずっと柴門ふみの『同級生』や『東京ラブストーリー』を思い出していました.なんだか似てません? リカと里伽子.出身地が地方(四国)ってところも同じ気がします.どちらかがどちらかに感化されているのでは? と思うのは,私だけでしょうか.
今回は,『海がきこえる』を単行本版で,『海がきこえる II』を文庫版で読みました.単行本のイラスト(画:近藤 勝也氏)はすごくすてきでしたが,文庫版のアニメ・イラストはいまいち….単行本の絵コンテのような雰囲気のほうがずっとずっと合っていると思います.
この作品,スタジオジブリでアニメ化されている,と聞きましたが,文庫版のアニメみたいな絵柄になっているなら,なんか観たくないなぁ….

タグ:氷室 冴子

祝・復刻!『ねこのごんごん』 [おすすめ本]

ねこのごんごん

ねこのごんごん

  • 作者: 大道 あや
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 大型本
私が子どものころ出版されていて(初版:1977年4月),その後2000年に限定発売された「ねこのごんごん」が,ついに再復刻!「こどものともコレクション2009」15冊中の1冊として限定出版されました.
このニュースを相棒から聞いたのは昨晩なのですが,福音館書店のページでは,既に「ねこのごんごん」は品切れ状態….「2009年2月に出版」とのことなのですが,いったいいつから売っていたのでしょう?(ちなみに,発行日表示は2009年2月25日になっているようです)
Amazonやビーケーワンなどのオンライン書店では,まだ「在庫あり」表示になっているのですが,…ちょっと危ない?! 感じですね.
ちなみに,私は今朝ほど,ジュンク堂で2冊確保しました.Web経由での確保なので,若干不安は残っていますが,たぶん大丈夫でしょう.でもやっぱり心配なので,明日さっそく取りに行く予定です.

やっぱり好きなのかも.吉本ばななの最高傑作?!『哀しい予感』文庫版 [おすすめ本]

哀しい予感 (角川文庫)

哀しい予感 (角川文庫)

  • 作者: 吉本 ばなな
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1991/09
  • メディア: 文庫

久しぶりに吉本ばななを読みました.

彼女の作品に出てくる女の子は,だいたい私から見るとうらやましいようにすっきりした発想をしていて,自由で,優しくて可憐です.

そんなところに嫉妬することも多く,「ちょっとファンタジーすぎるよね~.現実は違うのよ,現実は」とか言いたくなってしまったり「しょせん,吉本ばななは“末っ子文学”」とかうそぶいてみたくなってしまうのですが,久々に読んで「あぁ,やっぱりすてきだな」と思ってしまいました.

主人公の弥生はすてきな家族を持っていて,自由な行動力を持っていて,憧れの弟がいて,不思議な能力を持っていて,生活は充実しているのになにか満たされない気分.

そこになんだか魅力的な叔母の存在があり,そこにしばらく滞在させてもらって… ふと「事実」に気付いてしまう.そこからぐんぐんとドラマが始まります.

だいたい,出てくるひとはたいてい良い人でそれぞれ魅力的だし,でもそれぞれ弱いところも持っているし,みんないたわり合いながらも,物語は動いていきます.でも,この作品では特に「正のエネルギー」が光っていて,最後の終わり方もとっても素敵で,「あぁ,いい物語を読んだ」と心から思えました.

やっぱり,私,吉本ばななって好きなのかも.

そんなことを思いました.

なお,文庫版は,最初に出た単行本(未完の作品,と自分で言っている)に比べてけっこう加筆されているそうなので,単行本のほうだと印象が違うのかもしれません.

「知らないほうがいいことなんて,なにもない」.という力強いメッセージに励まされました.
まあ,「それこそが真実だ」と思っているわけでもないんですけれどね.


タグ:吉本ばなな

演劇的でドラマティック,最後まで引き込まれる恩田 陸『ドミノ』 [おすすめ本]

ドミノ (文芸シリーズ)

ドミノ (文芸シリーズ)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2001/07/27
  • メディア: 単行本

あ!恩田 陸だ! とパラパラめくり,登場人物紹介がリアルで思い入れられそうだったので読み始めました.ほんとにおもしろくて,ぐんぐん読んでしまいました.

登場人物ひとりひとりが生きていて,人物像や環境や過去がリアルに想像できる楽しさ.

それぞれの人が,演劇さながらに大げさに身振り手振りを交えながらコミカルに動く楽しさ.

小劇場の演劇をほうふつとさせるおもしろさです.…恩田 陸って演劇部だったのかしら.

この書籍を脚本にして,劇もすぐできちゃいそうだよなぁ… ちょっと登場人物多すぎだけど(笑).

現実をぶっ飛ばして笑いたい人に,お薦めです.


タグ:恩田 陸

これぞ「不倫=純愛」、夏目漱石の『門』 [おすすめ本]

門 (岩波文庫)

門 (岩波文庫)

  • 作者: 夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1990/04
  • メディア: 文庫

『三四郎』、『それから』に続く三部作の終編。『それから』は、他人の妻と想い合い、成功人生を捨ててすべてを告白する…という話でしたが、本書では、そうやって一緒になった男女が世間を恐れながらひっそり暮らしているさまを描きます。教訓でもなく、弁護でもなく、ただ起こりそうな事件を実感に迫って描いており、引き込まれてしまいます。
なぜ他人の妻に…というのは、ほとんど描かれていません。それは前作でやったので、本書ではいさぎよく省いています。
漱石ってどんな人だったのでしょうね。自分を戯画化する客観性を持ちながら、終生悩みを持ち、あがいていた人のように思います。そして、その悩みやあがきをいちいち作品に投影していたように思います。
あんなに立派で厳めしい漱石先生が、胸のうちではこんなことを考えていたのか、と思うと、さらに興味深いです。


タグ:夏目漱石

「不倫もの」と侮れない真面目さ,夏目漱石の『それから』 [おすすめ本]

それから (岩波文庫)

それから (岩波文庫)

  • 作者: 夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/11
  • メディア: 文庫
先日『三四郎』を読み,その続編,と聞いたので,『それから』を読んでみました.
かなり前に「『それから』は不倫の話」と聞いたことがあり,ちょっと下世話な感じの興味を抱いていたのですが,読んでみてびっくりしました.これは,すごく真剣な恋の話でした.
ちょうど,『虞美人草』で主人公の友人が「一生に一度くらい,真面目にならなくっちゃいけない」と主人公を説いた,その「真面目(問題にまっすぐ向かい合うこと)」をまさに実践したような話でした.
主人公の代助は,まあ哲学青年なわけです.生活のための職業,というものを軽蔑しており,自分にとって正しいこと,自分に正直なこと,自分の哲学を貫き通しながら生きています.ただし生計に関しては,金持ちの父親から恵んでもらっている形で,まるきり甘ちゃんのぼんぼんです.やっていることは.
それが,旧友に再会し,旧友の妻(彼女とも旧知の仲)と2度,3度会ううちに,自分が本当に愛している人はこの人だった….と気付く.
それから,どうするか.ここからがすごいところです.
現代人なら,もっとサバサバとぬけぬけと,自分たちの都合の良いように立ち回るのではないかと思うのですが,代助は違いました.また,三千代さん(旧友の妻)も違いました.
代助と旧友(平岡)のやりとりにも,すごいものがあります.妻を愛しているとか愛していないとかいうことではなく,自分の体面が….人の道にもとる….という,名誉や倫理が前面に出た議論なのです.三千代さんが今,どんなにつらい思いをしているか,とか,彼女を幸せにできるのは誰なのか,という話はちらとも出てこないのです.
まあ,時代なんでしょうが,…. 

タグ:夏目漱石

30代になって初めて分かる春樹の哀しさ『ダンス・ダンス・ダンス』 [おすすめ本]

ダンス・ダンス・ダンス〈上〉 (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス〈上〉 (講談社文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/10
  • メディア: 文庫
ダンス・ダンス・ダンス〈下〉 (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス〈下〉 (講談社文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/10
  • メディア: 文庫

大学生のとき,課題図書を読んで感想を述べ合う少人数授業に参加していました.石川 達三の『青春の蹉跌』やら,村上春樹の『ノルウェイの森』やらを読んだのですが,普段読まないタイプの本が新鮮な一方で,「これのどこがおもしろいんだろう?」とふに落ちない本もいくつかありました.

『ノルウェイの森』は,思いっきりハマる人と,私のように「…」な人にはっきり分かれていたように思います.ついでで『羊をめぐる冒険』や『1973年のピンボール』なども読んでみたのですが,やっぱりどの作品も,よく分からなかったです.さらに言うともっと後で,『ねじまき鳥クロニクル』や『スプートニクの恋人』も読んだのですが,やっぱりよく分からなかったです.「ああ,私には村上春樹は理解できない」と思いました.

で,なにを思ったか,つい先日,『ダンス・ダンス・ダンス』を読み始めました.夢中になって,というほどでもないのですがすいすいと読み進め,上下巻を無事に読み終えました.で,「村上春樹という人は,こういう人だったのか」と,初めて作者の気分を理解できたような気がしました.

まず,この作品を読むときには,「1970年代ってこんな雰囲気で,1980年代ってこんな雰囲気だった」ということを分かっていないと,理解しにくいと思います.学生運動が盛り上がって政治に積極的に関わっていた時期(安保闘争とか)から,一転してノンポリの時代,そしてバブルだけがふくらんでみんな豊かさを享受しだす時代….そんな中で,虚しい気持ちを抱いてさまよっている若者(しかも「若者」というには年を取りすぎた,と自覚している世代).だからこそ「とにかくステップを踏むこと.踊り続けるしかない」という言葉が出てくるのだと思いました.

客観的に見ると,なんだかいつも美味しそうな料理を作っているし,食材は高級だし(なんたって青山ですから),経費でハワイには行けるし,なにが不満なの?! と言いたくなる気もするのですが(笑),どんなに客観的に見て恵まれていても,本人が幸せだと思っていなければ幸福ではないのだ,本人が納得できなければ永遠に迷路の中なのだ,という,主観的な物語です.

そうして,その主観の中で,主人公が救われていく過程に,とってもほっとしました.

もう一度『羊をめぐる冒険』を読み直してみようと思います.
20代のときとは違う読み方ができそうだから.


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